カマキリの寄生虫はなぜハリガネムシと言うの?SF小説的な生態!
今回はちょっとグロテスクなハリガネムシについて書きます^^;
皆さんはカマキリから出てくるミミズの様な得体の知れない生き物を見て、恐怖におののいた経験はないですか?
トラウマになる人も多いとか・・
これはハリガネムシというカマキリに寄生する寄生虫です。
ところで、なぜハリガネムシと呼ばれるのか?
そして、なぜカマキリの中からこんなに長い(数cm~40cm)生き物が出てくるのか?
その生態や摩訶不思議な一生を追いながら見ていきましょう!
目次
カマキリの寄生虫ハリガネムシはなぜハリガネムシと言うのか?
カマキリから細長いミミズの様な寄生虫が出てくるのは有名な話ですが、この寄生虫はなぜハリガネムシ(針金虫)と呼ばれるのでしょうか?
確かに色といい形状といい錆びた針金に似ています。
あと私達がイメージする虫と呼ばれるような形状とはちょっと隔たりがあるけど、そもそもこれは正式な名前なのか?
先ずハリガネムシの基本的なデータ、身体的な特徴を説明しますね。
ハリガネムシの種類
ハリガネムシとは、
類線形動物門ハリガネムシ網(線形虫網)ハリガネムシ目
に属する生物を総称して言います。
成田聡子博士の『したたかな寄生』という本によると、2014年の時点で日本には14種類のハリガネムシが記録されているとのことです。
そして世界に目を向けると、なんと2000種以上いると言われています。
ハリガネムシの大きさ、太さなど身体的サイズ、特徴
(画像:wikipedia)
カマキリなどから出てくる、ハリガネムシの成虫は数cm~30cm,大きいもので40cmに達するそうです。
太さは直径1~3mmです。
ただハリガネムシの種類のなかには1mに達するものもいるそうです。
ハリガネムシは黒褐色をしたものが多く、体の表面がクチクラという固い層で覆われており体節はありません。
ただ、このハリガネムシというのはしっかりした学名であって、目黒寄生虫館の標本にも『学名 ハリガネムシ』と書いてあります^^
(★「女児が吐出」が大変気になってしまいますが^^;人間や犬猫などへの寄生や影響については後日、記事にしたいと思います)
このハリガネムシはある地方で『ゼンマイ』と呼ばれています。
上記のwikiの画像からも分かるように、丸くなって固まると山菜の「ゼンマイ」にそっくりですね。
(★実は「ゼンマイの水煮」の写真もあり、あまりにもそっくりでした。その写真を掲載するとゼンマイが食べられなくなる可能性があるため、こちらの野生のまま生きている写真にしました^^;)
それでは次から、なぜカマキリからこの様な得たいのしれいない生物が出てくるのか?見ていきましょう。
ふ化してから次々と宿主を変え、目的を全うしていく過程には非常に驚かされます。
この様な仕組みは本当に進化を経て育まれたのか?誰か(神様?)がプログラミングしたと言われても全然不思議ではありません^^;
カマキリから寄生虫ハリガネムシが出てくるのはなぜ?その一生、生態
☆ハリガネムシは約1年のサイクルで下図の様な生活を送ります。
ハリガネムシはその成虫が水中で産卵する卵から一生を始めます。
川など水の中でふ化したハリガネムシの幼虫は、カゲロウなど水生昆虫の幼虫にたどり着き寄生をします。
水生生物は、ハリガネムシにとって一番目の宿主『中間宿主』となります。
成長に伴って複数の生物に寄生する場合は、幼生時代に寄生する宿主を中間宿主、最後にその中で成虫になる宿主を終宿主と言います。
川など水の中で成長した水生昆虫の幼虫は、やがて羽化し水から出て飛び回ります。
水生生物が成虫となり陸上での生活を始めると、陸上の昆虫に食べられます。
肉食性のカマキリ、カマドウマを始め雑食性のコオロギなどですね。
これらの昆虫が二番目の宿主『終宿主』となり、その中でハリガネムシは成長します。
そして夏から秋ごろ、寄生したカマキリなどの昆虫がハリガネムシに操られて水辺に近づく、あるいは水の中に入るとハリガネムシは脱け出し水の中の生活に戻ります。
これまでに成虫になっているハリガネムシは、水中で異性のパートナーを探し翌春に水中で卵を産みます。
カマキリの腹部を水に浸けてハリガネムシを出す実験動画
上記のような生態から、夏から秋ごろ捕まえたカマキリの腹部を水に浸けるとハリガネムシが出てくることがあります。
YouTubeにはたくさんの動画があります。
ただし、ハリガネムシをカマキリから脱出させると、大概カマキリは死んでしまうので学術的な研究以外は避けましょう!
それでは一体どのくらいの割合でハリガネムシはカマキリに寄生しているのでしょうか?
ハリガネムシのカマキリへの寄生率
成虫したカマキリのお腹の中には、ほとんどの場合ハリガネムシがいると思われている方がいますが、実はそんなこともありません。
はっきりした数値のデータは分かりませんが、北海道大学の大学院教授、東正剛さんは著書『みんなが知りたい!「昆虫」のことがわかる本』の中で次の様に書いています。
最初にことわっておきますが、ハリガネムシのすべてが寄生性ではないようです。また、カマキリすべてにハリガネムシが寄生しているわけでもありません。それでも、ハリガネムシが寄生したカマキリはたくさん観察されています。
あと探偵ナイトスクープという関西中心に放送されている大人気番組で昔、数十匹のカマキリを捕まえて実際ハリガネムシが寄生しているか?調べた様です^^;
探偵ナイトスクープでのハリガネムシ調査
大人気番組『探偵ナイトスクープ』で過去、ハリガネムシを扱っていたのですが、期待された結果は得られなかった様です。
↓ のページに番組側から協力を依頼されたノゾピーさん(蝶の観察・撮影家)の記録が残っています。
http://www1.kcn.ne.jp/~j-nozomu/telebi.htm
どうやら30名ほどでカマキリを数十匹捕まえて、一匹一匹水に浸していったらしいのですが、1匹もハリガネムシが出て来なかった様です。
主に草原に住むオオカマキリとかは、ハリガネムシに寄生されにくいので番組で捕まえたカマキリはその種のカマキリかもしれませんね。
この番組が放送されたのは。2007年頃の様なので、まだあまり情報が少なかったかもしれません。
ノゾピーさんの後、某昆虫同好会が第二ロケに参加したそうですが、その時はハリガネムシを発見出来た様です。
(★私もまだ未確認なのですが、もし2007年とか過去の探偵ナイトスクープを見る方法を知っている方がいましたら、コメント欄より教えて下さるとうれしいです。YouTubeとかにも過去あったようですが、違法なので削除されていますね^^;)
カマキリの種類によるハリガネムシの寄生率の差
カマキリの種類により生息環境がことなるため、ハリガネムシの寄生率はカマキリの種類によって大きく偏っていると思われます。
例えば、ハラビロカマキリの寄生率は高いですが、オオカマキリはそんなに高くない様です。
これはどういうことかというと、ハラビロカマキリは涼しい風通しの良い場所を好むのですが、これはトンボの生息地域と重なります。
ご存知の通り、トンボは水生昆虫でヤゴでいる時期水中でハリガネムシに寄生されます。
一方オオカマキリは、草原でバッタ等を主に食べるのでハラビロカマキリより水生昆虫を補足する確立は低くなります。
樹上性のカマキリ(ハラビロカマキリ等)と、地上性のカマキリ(オオカマキリ、コカマキリ等)に分けることが出来ます。
前者はトンボだけでなく、カゲロウなど空を飛ぶ水生昆虫を食べる確立が高まります。
生息地域が水生昆虫の成虫の生息地域と重なる種のカマキリは水生昆虫の成虫を捕食する確立が高いので、自ずとハリガネムシの寄生率は高くなります。
ハリガネムシはいつからいつまで水中にいるのか?
カゲロウの幼虫など第一宿主の水生昆虫が羽化し陸上に出てから、第二宿主のカマキリなどを抜け出して水中に戻るまでは、寄生という形ですが陸上にいます。
つまりそれ以外は水中にいることになります。
ですが水生昆虫の幼虫に寄生している時は、寄生生活をしています。
寄生生活の反対(反意語)は、自由生活と呼ばれたりするのですが、
①卵からふ化して多生物に寄生するまで(幼虫)
②昆虫から抜け出し水中生活に卵を産み、この世を去るまで(成虫)
②の成虫段階で水中でいる期間は、上記のハリガネムシの一生から考えると半年以上になりますね。
翌春:水中で産卵
魚の中からハリガネムシが出てくる場合がありますが、この段階で捕食される場合ももちろん考えられますね!
ハリガネムシはいつから成虫になるのか?
ハリガネムシについて知っている人は大抵カマキリから出てくるハリガネムシは成虫だと思っています。
なんせ体長が10cm以上あります。大きいものだと30cm~40cmになるようです。
カマキリより長いものが、カマキリから出てくるんです。
まるで映画『エイリアン』でエイリアンが人間の中に寄生して人間の中から生まれるかの様ですね。
エイリアンの映画はフィクション(SF映画)なのに対して、ハリガネムシは現実の私達の住んでいる世界、しかも身近に存在します。
話が逸れました^^;
ハリガネムシがいつ成虫になるかというと、資料によって見解が違うことを発見しました。
目黒寄生虫館のパンフレットには、ハリガネムシに触れており、「夏から秋ごろ昆虫から抜き出して水中で自由生活を営み成虫になる」いう説明をしています。
同じく同博物館が書いている『絵で分かる寄生虫の世界(講談社)』も同様の見解です。
ですが、同じく目黒寄生虫館が書いている『寄生蟲図鑑』には「カマキリなどの体内で成虫になる」と書いていました。
どちらが正しいのしょうか?
7、8冊の本を見る限り『カマキリ等の終宿主の中で成虫になる』が圧倒的に多かったです。
(★詳しい方がいましたら、記事の下のコメント欄よりご教授頂けると幸いです。お願い致します!)
ハリガネムシが寄生する生物
ハリガネムシが寄生する生き物を中間宿主、終宿主に分けて列記しておきます。
中間宿主(幼虫が寄生)
カゲロウ、ユスリカが有名です。
あとヤゴ(トンボの幼虫)、トビケラ、カワゲラ
終宿主(成虫が寄生)
カマキリ、カマドウマ、ゴミムシ、ゴキブリ、コオロギ、バッタ、ミズスマシ、ゲンゴロウ
魚(イワナ、ヤマメ、アマゴなど)
カエル?
渓流の魚はカゲロウなど水生昆虫を好んで食べますね!
俺、釣りするんだけど、 岩魚の腹の中からよく出てくるよ。
(https://science3.5ch.net/test/read.cgi/wild/1090961645/)
魚には良く寄生するというけど、イワナにはいるんですね。
フライフィッシングとかする人は分かると思うけど、イワナは水生昆虫を良く食べます。
(★ヨーロッパ発祥のフライフィッシングでは、 カゲロウなどを模した毛ばり(疑似餌)を使います)
これは、学術的な実験で明らかにされたことです。
目黒寄生虫館のハリガネムシ(画像あり)
東京都目黒区にある『目黒寄生虫館』に行ってきました。
昔は寄生虫博物館と言った気がしますが気のせいかな?
今回の目的は、ハリガネムシの標本と置いてある資料(本)を参考にするためです。
ハリガネムシに関する標本は2つあり、①ハリガネムシ単体のものと②カマキリとハリガネムシが一緒に入ったものでした。
ここは展示物の写真撮影が個人利用に限りOKなので、SNSにあげている方も多いです。
私もしっかり写真を撮って来ました^^
上記の2種類のハリガネムシの標本が展示されています。
少しアップにしてみます。
先ず、カマキリとニホンハリガネムシが一緒に入っている標本です。
次にこの記事の最初の方で、学名の書いてあるラベルを出したハリガネムシの標本です。
日本では人間に関する寄生虫は激減したものの、やはり知っておくといいですね!
私は「日本住血吸虫」の存在の恐怖した過去があるので、興味深々展示物を見ました。
(★現在は宿主の貝が絶滅寸前のため、人間への被害もほとんど無いそうです)
参考文献
『したたかな寄生』(幻冬舎)・・・成田聡子著
『みんなが知りたい!「昆虫」のことがわかる本』(メイツ出版)・・・東正剛著
『寄生虫の奇妙な世界』(誠文堂新光社)・・・斎藤勝司著・目黒寄生虫館監修
『wikipedia』
あとがき
小学生の頃、カマキリのおしりから何か出てるよという友達の知らせに強烈な恐怖感を覚えたのが、私がハリガネムシを認識した最初でした。
「なんかミミズみたいなのが出てきた。カマキリはお腹の中に別の生き物をかってるんだよ。」
他の友達は、
「そうだよ、カマキリを潰すと中からミミズが出てくるんだよ。」
私はそんなの信じられなかったし、気分が悪くなりました。
そうです、私は基本的にグロテスクなモノが大嫌いです。
私のその時勝手に抱いたイメージは「実はカマキリの実態はその細長い生物で、カマや羽が付いた緑色の体は、スーツの様なもの」です。
世の中の生物がみんなそうだとしたら、怖いですよね~(>_<)
私の気分が悪くなったのは多分、『V』という1983年アメリカのSFドラマの影響が強いです。
「V」に出てくる宇宙からの訪問者ビジターは、人間の皮を被っていますが、中身は爬虫類の様な異星人です^^;
最近のコメント