ハリガネムシは人間に爪から寄生する噂の真相!犬、猫も注意が必要?
カマキリに寄生することで有名となった寄生虫ハリガネムシは果たして人間に寄生するのか?
こんなSFや漫画の様なテーマについて真剣に調べてみました。
都市伝説的な噂に「ハリガネムシは爪から人間の体内に入り寄生する」と言うものがあります。
確立は低いものの、実際の人間への寄生例を挙げて、その真相に迫りたいと思います。
犬や猫は外にいる時、カマキリなどの昆虫も食べてしまうことがあります。
犬、猫への寄生についても調べてみました^^
目次
ハリガネムシとは?寄生する生物とその一生
先ずハリガネムシについて簡単に説明しておきます。
知っている人は次の見出し「ハリガネムシの人間への寄生例」から読んでくださいね!
先ず簡単にハリガネムシとはどういう生き物かというと、回虫などの様な線形生物の仲間です。
②カゲロウなどの水生物が羽化して成虫となり水の外へ出ると、今度はカマキリなどの肉食性の昆虫に食べられます。
③ハリガネムシはカマキリなどの昆虫の中で成虫になり、晩夏から初秋にかけてカマキリを水辺に誘導させます。
④そしてカマキリを水の中に飛び込ませ、自分はカマキリのお尻から脱出し、水生生活に戻り交尾相手を見つけ産卵します。
ハリガネムシの終宿主には、カマキリ、カマドウマ、コオロギ、バッタ、魚、カエルなどがいます。
次の記事にこれらのことを、図や写真も用いて詳しく解説しています。
合わせてお読み頂けたら幸いです^^
こんなグロテスクで摩訶不思議なハリガネムシが人間にも寄生する例を追っていきましょう^^;
ハリガネムシの人間への寄生例
基本的には、ハリガネムシは人間には寄生しません。
大概、寄生虫はそれぞれ宿主とする生物が決まっていることと、ハリガネムシは無脊椎動物にしか寄生しません。
(渓流魚やカエルはどうなのか?という疑問が残りますが。)
あとハリガネムシは、カマキリなど終宿主(最後に寄生する宿主)から抜け出すと、もうどの生物にも寄生しないという習性があるからです。
ハリガネムシが人間に寄生しない理由、根拠をまとめておきますね!
- それぞれの寄生虫にはその特有の宿主虫が存在する
- ハリガネムシは、脊椎動物に寄生しない
- ハリガネムシは終宿主から抜け出すと、もう寄生はしない
ただ人間に寄生したという寄生例らしきものがあるのも確かです。
同記事ではそれらを集めて出来る範囲で検証したいと思います。
ケース①1966年千葉県(目黒寄生虫館のハリガネムシ標本より)
これは、私が目黒寄生虫館を訪れた際に撮った写真です。
目黒寄生虫館にはハリガネムシの標本が2つ置いてあります(2018年6月)。
良く見ると右側の標本のラベルに如何わしいことが書いてありますね~
拡大してみます。
なんと『女児が吐出』!
1966年4月27日千葉県での事例の様です。
ただ吐出ということは、口から吐いたということなので、何かの拍子にハリガネムシを口に入れてしまった可能性が高いです。
人間はハリガネムシを取り込むと排出しようと体が働くとのことです。
調べてみると、以前『寄生虫館物語―可愛く奇妙な虫たちの暮らし』という本が出版されており、古本ならアマゾンなどで手に入ります。
これは目黒寄生虫館を設立した寄生虫の世界的権威である亀谷了博士の著です。
ハリガネムシの部分を引用させて頂きます。
この寄生虫は、人体に迷入することがあり、世界各地で報告がなされている。迷入すると、人は口から突然、この寄生虫を吐くという。ある夏の日、千葉県の四十歳くらいの男性が、五歳の娘がこんなものを吐きました、と虫をもって寄生虫館を訪れた。みるとカチカチになった灯心のようなものが丸めてあった。私は、これはハリガネムシだと直感した。話を聞いてみると、この親子は最近まで福島県いわき市に住んでいて、五歳の少女はよく川べりで遊んでいたという。きっと、その時に、何らかの形でハリガネムシの幼虫が口の中に入ってしまったのだろう。
(引用元:『寄生虫館物語―可愛く奇妙な虫たちの暮らし』)
ケース②
次は、北海道1997年6月24日のハリガネムシの人間への寄生例です。
北海道のハリガネムシ人体寄生例
○宮本健司(旭川医大・寄生虫)、上西 博(富良野協会病院・内科)
類腺形動物綱(Nematomorpha)の鉄線虫類に属するハリガネムシは世界で35例、日本では本州に5例の人体寄生が確認されている。
北海道で初めてハリガネムシの人体例を経験した。1997年6月24日に北海道中央部に位置する美瑛町に住む男性(35才)が鼻がムズムズしてクシャミをした際に鼻腔から黒い糸状の
虫体を1個体排出し受診した。虫体は生食液に入れ冷蔵庫に保存して翌日観察した所、緩慢な運動を示して生きていた。この虫の体長
は11cm、体幅は体中央部で0.63mmである。頭端は鈍円に終わるが口腔は開口していない。体表は網目紋様パターンを示す。尾端
は2尾葉に別れて腹側へ”く”の字状に屈曲していたのでハリガネムシ雄虫体と判定した。本虫体の人体寄生は北海道で最初の症例で
あるが、その感染経路は不明である。雄虫体の寄生例は鹿児島で発見されており、その大きさは今回我々の経験した虫体の約2倍である。
光学顕微鏡および走査型顕微鏡により形態を観察したので報告する。
(参照:https://science5.5ch.net/test/read.cgi/wild/1090961645/)
医師の方の報告なので、信頼は置けますがハリガネムシが人間を宿主としたわけではないと思います。
こちらも何かの拍子で、ハリガネムシを体内に取り込んでしまった例の可能性が高そうですね。
本当の意味で人間がハリガネムシに寄生されたということはハリガネムシの習性的にありえませんが、世の中何が起こるか分かりません。
★他にも人間への寄生例、体内への取り込みの事例が見つかり次第追記していきたいと思います。
「ハリガネムシは人間の爪から入る」という都市伝説の由来は?
これはどうやら2004年から言われる様になった都市伝説だと考えれます。
ハリガネムシが爪から人間に入り込むという噂は、ある漫画が由来です。
2004年に少年ジャンプに連載されていた梅澤春人氏のダーク・ファンタージー『LIVE(ライブ)』です。
10週間と短期間連載されていたようですが、単行本も1冊出ていますね。
私は漫画を読むほうではないので、もちろん読んだことは無いですが、この漫画の中で主人公の勇太朗が不良の巳道乱(みどう らん)にハリガネムシを爪の間に進入させられるという描写があった様です。
この頃には、関西方面で放送されている『探偵ナイトスクープ』で取り扱われていたりハリガネムシが話題になっていました。
少年ジャンプは、wikiによると2004年の少年ジャンプの発行部数は平均で300万部です。
回し読みを考えるとこの数値以上に読まれている可能性がありますね。
最近では200万部を切ったとニュースにもなっていましたが、有名漫画雑誌の影響力はスゴイです。
ハリガネムシが爪から体内へ入るというのは、あくまで都市伝説です!
ハリガネムシは、カマキリなど終宿主から抜け出すと、もう多生物に寄生をしないという性質があります。
犬、猫などへのペットに寄生することも!?
最後に私達のペットである犬や猫にハリガネムシは感染するかということについて書いていこうと思います。
犬や猫が昆虫を食べるのをご存知ですか?
私は小学生の頃、隣や近所の家の犬を散歩させてもらっていたのですが、ある時、犬が生きたセミをムシャムシャ食べ始めたのです。
地上でバタついているセミです、良いタンパク源とかになるのでしょうか?
まぁこの様に、犬、猫は外でどんな昆虫を食べているか分かりませんね^^;
当然、私達の見ていないところで、ハリガネムシが寄生しているカマキリ、カマドウマ、コオロギなどを食べている可能性もありますし、川などの水を飲むこともあります。
ただ人間への寄生が無い様に、犬や猫などへの寄生も無いはずです。
先にも書きましたが、ハリガネムシは脊椎動物には寄生しないことが知られています。
犬、猫がハリガネムシが寄生した昆虫類を食べても基本的には、胃の中で消化するか、吐き出してしまいます。
ただ人間が体内に取り組んだ事例がある様に、犬、猫ではその様な事例がさらにたくさんあると思うのです。
例えばこちらです。
麻布大学獣医学部寄生虫学数室の3人の先生達と文京女子短期大学の先生が書かれた論文の要約を掲載しておきます。
3才の雌猫が白い泡状物とともに雌のハリガネムシを1匹吐出した. 虫体は体長585mm, 最大体幅1.2mmで, 体表クチクラに環状帯, 腹中線, 背中線, アリオールがないこと, 口の開口がないことからGordius ogataiの近似種と思われたが, 著しく軟化していたために種の確定はできなかった. 猫は臨床的に正常で食欲もあり, 戸外で昆虫などを捕食していたことから, ほぼ成熟したハリガネムシ寄生昆虫の捕食により感染したと思われた.
(引用元:https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010391465)
自分が買っているペットが昆虫を食べていても基本は大丈夫そうですが、やはり嫌なものです^^;
ただハリガネムシ自体の寄生は無いらしいので、安心ですね!
あとがき
まとめると、
- ハリガネムシの本当の意味での脊椎動物(人間・犬・猫)への寄生例は無い
- ただ、胃の中に取り込んで消化したり、口から吐いた事例はたくさんある
ですね。
ハリガネムシは、人間、犬、猫などには寄生しなと分かって一安心ですが、人間、犬、猫を宿主とする寄生虫は日本に存在します。
人間で言えば、エキノコックスや今では聞かれなくなりましたが、日本住血吸虫です。
知っている人は分かると思いますが、恐ろしい寄生虫ですね。
無害とされていますが猫で言えば、トキソプラズマがあり、これは半数の人間にも寄生していると言われているんです。
地球に住む限り、これらの寄生虫のことはよく研究されなければいけないですね。
その意味で目黒寄生虫館の生みの親であり、世界的な研究者の故・亀谷了博士には感謝です。
もし人間、犬、猫などのペットへのハリガネムシの寄生例を知っている、口から出てきたなどの体験がありましたら是非コメント欄よりコメントお願い致します。
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