ES細胞iPS細胞STAP細胞の違いは?今後に向け理解しよう!

スポンサーリンク

皆さんは今後大きく期待している事柄ってありますか?わたしは山中伸弥教授のノーベル賞受賞で有名になったiPS細胞がその1つです。単純に興味があるのですが、やはり自分の家族にはいつまでも健康でいて欲しいからなんです。皆さんはどうですか?

そんなiPS細胞ですが、テレビでニュースを見ていると、他にもES細胞とか大論争を引き起こしたSTAP細胞なんてのもありますね。

わたしたち人間は、人口の増加とともに食料を大量に調達する必要が出てきました。そして美味しい食料を簡単にたくさん作るために、植物や動物の遺伝子操作やクローンの研究をする様になりました。また人間の医療の分野でもその研究が進み、発展して行きました。

その一つに再生医療があります。病気や事故、老化などで使えなくなった人間の組織や器官などを、人間の細胞から人工的に新しく作った組織や器官で取り替えるといったものです。それでは3つの細胞の違いを見ていきましょう!
(注意!STAP細胞は2016年8月現在確認されていませんので、この後のSTAP細胞の記述は理論的なものです。)

ES細胞、iPS細胞、STAP細胞の違い

顕微鏡

これまで、ES細胞、iPS細胞、STAP細胞などが発表されて大変話題になってきましたが、どれも人工的に作られた万能細胞です。3つとも再生医療に不可欠な万能細胞を作るという目的は同じです。しかし作る材料や方法などに違いがあります。

万能細胞とは

万能細胞とは役割が分かれていく(分化される)前の細胞のことで、受精卵の様にどんな体の組織、器官にもなることが出来ます。

細胞が分化されると歯は歯、神経は神経という様に、役割が固定されてしまいます。細胞分裂しても特定の組織にしかなれない(元には戻らない)というのが大前提でした。

先ずES細胞、iPS細胞、STAP細胞の違いを下記の6つの項目から説明していきます。

  1. 人間のどこの組織から作るか
  2. どのように作るか
  3. 拒絶反応の有無
  4. 癌化のリスク
  5. 倫理面
  6. 今後の展望

1.どこの組織から作るか?

  • ES細胞 ⇒ 受精卵(胚盤胞)・自分では無い
  • iPS細胞 ⇒ 自分の皮膚など、いろいろな組織
  • STAP細胞 ⇒ 自分の血液中のリンパ球

iPS細胞は最初は皮膚の細胞から作られましたが、その後いろんな組織から作る研究が続けられています。ES細胞はもともと万能細胞です。しかし受精卵から作られるので後に禁止されてしまいます。詳しくは倫理の項目で説明しますね。

2.どのように作るか?

  • ES細胞 ⇒ 天然の万能細胞
  • iPS細胞 ⇒ 皮膚の繊維芽細胞の中に4つの遺伝子(山中因子)を入れる
  • STAP細胞 ⇒ リンパ球に酸による刺激を与える

ES細胞は最初から天然の万能細胞なので、あとはシャーレの培地の上で分裂させて増やすだけです。その後、分化させて大きな臓器などを作るときは豚とかの体内の中で育てます。

3.拒絶反応のリスク

  • ES細胞 ⇒ 有り
  • iPS細胞 ⇒ 無し
  • STAP細胞 ⇒ 無し

私たちの身体は、自分のもの以外を体内に取り入れると、免疫が働き拒絶しようとします。この中でES細胞だけは自分の体のものではありません。

4.癌化のリスク

  • ES細胞 ⇒ 無し
  • iPS細胞 ⇒ 現在は問題無し
  • STAP細胞 ⇒ 無し

あとでまた説明しますが、ES細胞はそもそも癌化のリスクを無くす為に、受精卵を材料とした経緯があります。iPS細胞は、材料として使っていた4つの遺伝子の一つが癌と関係していたため当初課題でした。現在はその問題の遺伝子が必要なくなり、リスクは回避されました。

5.倫理面

  • ES細胞 ⇒ 大問題
  • iPS細胞 ⇒ 問題なし
  • STAP細胞 ⇒ 問題なし

ES細胞は、もともと人間になる可能性のある受精卵を使うのが倫理的に大問題です。特にブッシュ大統領やバチカンが強く反対しました。iPS細胞、STAP細胞は自分の皮膚や血液の細胞を使うので問題無しです。

6.今後の展望

  • ES細胞 ⇒ 2001年から新たに作ることは禁止となった
  • iPS細胞 ⇒ 臨床実験が始められていて、すでに成功例がある
  • STAP細胞 ⇒ まだ確認されていない、仮説段階

理解しやすいように表にまとめますね。

 ES細胞iPS細胞STAP細胞
発表された年1981年2006年2014年
元の組織受精卵から皮膚などから血液中のリンパ球
問題点拒絶反応、倫理的問題癌化の問題(現在は大丈夫!)まだ成功していない
現状2001年に禁止ノーベル賞、臨床研究の段階仮説の段階

引き続きそれぞれの細胞ごとに説明します。イメージが膨らむと思います^^

スポンサーリンク

各万能細胞ごとに簡単に解説!

ES細胞(1981年)

1981年にイギリス、ケンブリッジ大学のマーティン・エヴァンズとマシュー・カウフマンにより初めて作られました。これは動物だけでなく、人間の受精卵(胚盤胞)からも作ることが出来ます。

問題が2つあるのですが、先ず材料として使う受精卵は他人の細胞なので、拒絶反応が起こる心配があります。もう一つは、赤ちゃんになる可能性を秘めた受精卵を使うことへの倫理的観点から、2001年に禁止されました。

iPS細胞(2006年)

2006年に京都大学教授の山中伸弥教授が発表した万能細胞です。ES細胞と違うのは、皮膚など再生医療の対象となる本人の細胞が使われる点です。本人の細胞を使うので拒絶反応もおこりませんし、もちろん倫理的問題もありません。

最初、癌化のリスクがあったのですが、現在ではそのリスクも回避でき2012年にノーベル医学生理学賞を受賞。

STAP細胞(2014年)

もう一度言っておきますがまだ仮説の域を出ていません。2015年、小保方晴子さんを中心として世間を騒がせる結果となり、論文も科学雑誌『ネイチャー』から撤回されてしまいました。

STAP細胞は、血液中のリンパ球が材料で酸による刺激で作られます。癌化のリスクが無く、iPS細胞より簡単に作れると大きな話題になりました。

その存在の真相は分かっていないのですが、未だに一流大学の研究室などがこぞって研究を続けていますね。

違いや共通点を書いてきましたが、これらの違いはバラバラに説明するより、『再生医療のための万能細胞を作る歴史』からひも解くとすごく分かりやすいです。下に続く万能細胞研究の大まかな歴史を読んでみてください。わたしもそうでしたが驚くほど理解を深まりますよ!

再生医療の歴史を追って違いを再確認しよう!

大学教授

1970年代

先ず知っておきたいのは、細胞の分化です。受精卵や受精卵が細胞分裂を繰り返して100個ぐらいになった胚盤胞は、これからどんな組織、器官にもなり得ます。

ところが、それぞれの細胞は一度分化が固定してしまうと、もう歯なら歯、赤血球な赤血球の様にある特定の組織や器官にしかなることが出来なくなります。

EC細胞というものが出来るまで、癌細胞、テラトーマ(良性の腫瘍)を除いては、一度分化した細胞は受精卵の様な万能細胞には戻れないというのが常識でした。

ここでもう一つ知っておきたいのは、癌細胞です。癌というと恐ろしいものですが、万能細胞の研究にはとても重要なものとなります。

なぜかというと癌細胞は、それぞれが持っている分化の役割を放棄して出来上がった細胞だからです。つまり分化をリセットする訳ですが、その仕組みが万能細胞の研究には不可欠でした。

EC細胞というのを説明しておきますね!EC細胞はES細胞以前、1970年に発明されたものです。マウスの良性腫瘍であるテラトーマから作られていたので、癌になりやすいという大きなリスクをもっていました。最初の人工万能細胞でしたが、医療という観点からすると使えなかったようです。

1980年代~2000年代前半

それから10年ほど、試行錯誤する訳ですが、今度はガンにならない万能細胞が1981年に発明されました。ES細胞です。とても期待されましたが、上記の様に拒絶反応の問題、倫理の問題で2001年禁止されてしまいました。

ブッシュ大統領やバチカンを中心にすごく反対があった様です。再生医療でなければ治らない難しい病気を持っている人達の気持ちも分かります。一方、倫理的な面でやってはいけないという考えもよく分かります。非常にデリケートな問題です。

もう作ってしまったES細胞を使っての研究自体は許され、多くの成果が報告され続けました。しかし、この様な背景があり再生医療の研究が4半世紀の間なかなか進みませんでした。そして、ここで大革命を起こしたのが京都大学の山中教授です。

2005年から現在

ES細胞でネックとなっていた倫理的問題、生体間の拒絶反応の問題ですが、これらの問題が無い万能細胞を山中伸弥教授が2005年に発明しました。iPS細胞ですね!実はそのころ韓国の黄(ファン)教授の捏造事件もあり、発表が2006年8月と遅れてしまったそうです。

このiPS細胞を作るには、次の4つの遺伝子(山中因子)を、材料とする細胞内に入れなければなりません。

  • Oct3/4(オクトスリーフォー)
  • Sox2(ソックスツー)
  • Klf4(ケーエルエフフォー)
  • c-Mic(シーミック)

そしてこの中のc-Micという遺伝子は、ガンに関係する遺伝子らしいのです。ES細胞の弱点である倫理と拒絶反応の問題は解決されたのですが、その前のEC細胞の弱点だった癌化の問題が、再び浮上してしまったのです。

ガンのリスクはまずいということでいろいろ研究されました。2014年、血液中のリンパ球に酸性の刺激を与えることで出来るSTAP細胞が、注目を集めました。癌化の心配もなく、iPS細胞より効率的に出来るということだからです。

各細胞が生成される成功率は、iPS細胞が1%以下,STAP細胞が約10%だと言われていました。

現在、iPS細胞のガン化へのリスクは解決され、2013年には厚生労働省も臨床研究へのGOサインを出しています。これで実際に患者さんを治すことによって、研究を進めることが出来る様になりました。

iPS細胞が発表されてから間もなく、山中教授の研究でc-Micを使わなくてもiPS細胞が出来ることが分かったんです。c-Micは、iPS細胞の形成を加速させる触媒みたいな役割をしているに過ぎないことが分かりました。現在ではiPS細胞が出来る精度が上がっているので、必要はなくなりました。

まとめ

3つの万能細胞、違いはお分かりになりましたか?私は、最初これらの細胞が再生医療に大きく貢献することは漠然と分かってはいましたが、どのような関係にあるのか全然理解していませんでした^^;

理系出身の自分としては仕事先でその手の話が出ると、しっかり理解出来ていないのがすごく恥ずかしかったです。それで何冊も本を読んだという経緯があります。

わたしも日本の多くの皆さんと同じように、山中教授がノーベル賞を取る前からNHK特集などを興奮して見ていました。歯が新しくなったり、視力が治ったり、癌などの病気の特効薬など期待したいことはいくらでもありますからね。

そして日本が再生医療でもトップを走る国であることは、日本人としてすごく誇りです。

利権とか倫理とか、難しい問題もいろいろとあるのでしょうが、早くiPS細胞が実用化して欲しいですね!

☆医療分野というデリケートな分野について、自分の備忘録的な目的もありまとめてみました。間違っている記述がありましたら、遠慮なくコメント欄にご指摘頂けると幸いです。どうそよろしくお願い致します!

スポンサーリンク

運動,健康

Posted by 40sfile


PAGE TOP